筑後地方に伝わる綿織物・久留米絣。丈夫な綿織物は仕事着に最適で、昔は各家庭で手織りされていました。実用性重視の普段着だけに、無地が一般的だった約200年前。農家の娘の偶然の発見により生み出されたのが、優しい風合いの柄を、織物に浮かび上がらせる技法です。綿糸を先に染めてから織ることで、微妙なズレが生じ、独特なかすれ模様となります。これが久留米絣の大きな特徴であり、魅力。現在では、伝統的な幾何学模様や藍染めだけではなく、モダンな柄、ポップな色合いの製品も多く作られています。
規則的な模様を浮き出させるのが得意な久留米絣。元々は藍色と白で表現されていたが、現在は色彩も多彩に。
デザインを決め、柄を生み出すために経糸と緯糸、地糸と絣糸の配分を計算します。右の写真は手織りの際に行う絵糸書き工程。これらは糸の伸縮率も考慮した上で行わなければならない大変難しい作業です。
昔の久留米絣の主な用途は着物。綿織物なので、季節を選ばず日常的に着られるのが魅力です。
括り、染色工程などを経た綿糸を乾燥させます。引っ張った状態で干しているのは糸の伸縮を少なくするためです。糸の束に白く見える部分は染まっておらず、この束を一本一本の糸にほどき、織っていくことで絣特有の柄が生まれます。
藍で糸を染めるのが伝統的な久留米絣。「藍は生きている」と職人たちが話すほど、手間をかけて世話をしなくてはいけないのです。
染色、乾燥を終え、一本一本にほどいた糸を織っていきます。手織り、機械織りともにここまでの工程はほぼ同じです。
機械が発達した現代ですが、手織りにこだわる工房もあります。機械織りでは表現できない繊細な柄を生み出せるのが手織りの魅力です。上下に分かれた経糸を引き上げ、その間に緯糸を通し、打ち込んでいくことで一枚の綿織物を完成させます。大きく、経糸と緯糸の両方で柄を織り出す「本絣」、経糸で柄を織り出す「絵絣」、緯糸で柄を織り出す「板絣」に分けられます。
ユネスコ無形文化遺産にも登録された博多祇園山笠。実はこの祭りと久留米絣は深い関わりがあります。山笠期間中の正装に当たる長法被が久留米絣で作られており、祭り期間中、博多の街のいたるところで男性たちが長法被を着用している姿を見ることができます。
靴メーカーとコラボしたスニーカー。白と紺など異なる色の糸を織り上げ、かすれた風合いを生む。
手提げバッグ。久留米絣らしいにじんだように見える柄のズレがナチュラルな雰囲気。
ポシェット風のショルダーバッグ。
現代の暮らしに合う製品が多数生まれているのも久留米絣の魅力。紳士用のシャツとストール。