770年以上もの歴史を持つ博多織。中国の王朝・宋から、博多の商人が持ち帰った織の技法がルーツといわれています。多くの経糸に、緯糸を強く打ち込むことで厚く、張りのある生地に織り上がるのが大きな特徴で、昔から和服や浴衣の帯として愛され続けてきました。1600年には、筑前福岡藩の初代藩主が幕府への献上品にも選んだ特別な織物。現在でも、その歴史から「献上柄」と呼ばれる伝統的な柄が博多織、ひいては博多地区のシンボル的な模様として、街中のさまざまな場所で使われているほどです。
日本各地に織物の産地があるなか、博多織の帯はとくに重宝されました。その理由は一度締めたら緩みにくく、帯としてとても機能的だったことが一つ。1815年には歌舞伎役者が博多織の帯を締めて舞台に立ったことから、瞬く間に江戸中で評判となった歴史もあります。そんな、日本人の暮らしになくてはならなかった博多織ですが、時代の流れとともに洋服が広まり、和服を着る機会が減ったことで、職人たちは博多織の新たな可能性を模索し始めました。それが、洋服と合わせてコーディネートできる今までなかった製品の開発です。現代では、ネクタイや財布、ポーチ、名刺入れといった、博多織ならではの気品やセンスが光るアイテムがたくさん生まれています。数千本もの経糸や緯糸を、職人たちが心を込めて織り上げた高品質な織物。ぜひ、暮らしに取り入れてみてはいかがでしょう。
博多織は九州の玄関口として栄える博多で生まれ、育まれてきました。JR博多駅など街中のいたるところで博多織の柄(献上柄)をモチーフとした、タイルアートやシンボルマークが見られます。
原料は蚕の繭からとる絹糸が一般的。先染めの経糸と、細い糸をまとめた太い緯糸を織り上げていきます。
今も昔も博多織の主な用途は、やはり着物の帯。絹糸を丹念かつ頑丈に織り込んでいるため、生地に張りがあり、締めやすく、一度締めると緩みにくいこと大きな特徴にあげられます。
現在でも、昔ながらの手織りにこだわる職人もいます。一般的にあらかじめ織り機に整列された経糸に緯糸を織り込んでいくことで生地が完成します。
現代では、機械織りが主流となっていますが、完全にオートメーション化はできません。熟練した技術と知識を持っている織り手が機械のそばにいて、糸の切れや、柄などを常にチェックしています。時代とともに機械の技術が発達しようとも、職人の手仕事が必要なのです。
黒地、白地に金糸を合わせたシックで上品なボストンバッグ。丸みを帯びたフォルムも特徴。
博多織とレザーの組み合わせが斬新な名刺入れ。浮かび上がるような博多織の柄が目を引きます。
博多織で作られた折り鶴のストラップ。折り紙と博多織が融合した日本らしいアイテムです。
表面に博多織を縫い付けたビーチサンダル。神戸の老舗サンダル製造会社とコラボしています。
博多織の柄の繊細さが伝わるブックカバー。赤や青、黒など色のバリエーションも豊富です。
上品かつ粋なデザインの献上柄ネクタイ。1928年、チャールズ・リンドバーグが飛行機で来福した際、博多織のネクタイが献上されました。
扇面に博多織を用いた扇子。やや厚みのある生地を用いており、紙より丈夫なのも魅力です。
タンブラーに生地を入れるだけで、和の雰囲気に。日常的に博多織を取り入れられます。