岩手の伝統的工芸品
伝統的工芸品とは
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。指定には、100年以上の技術技法の伝承等の要件があります。
南部鉄器
南部鉄器は、銑鉄を主原料として造られます。その魅力は質実剛健、そして素朴で深みのある味わいにあります。仕上げに漆を塗ることで錆止めにもなり、鉄の素材を柔らかに活かす独特の意匠は、南部鉄器ならではの表情を創り出しています。
沿革・歴史
南部鉄器の産地は盛岡市と奥州市。盛岡の鉄器は17世紀初め、南部藩主が京都から釡師を召し抱え茶の湯釜を造らせたのが始まりとされ、奥州の鉄器は、平安時代末期、藤原清衡が近江国から鉄器職人を招き、武具等を作らせたのが始まりとされています。近年では海外でも人気で、2010年には上海万国博覧会にも出展しました。
岩谷堂箪笥
桐、欅などの良質な素材から生み出される岩谷堂箪笥。天然無垢材ならではの美しい木目、華麗で豪快な手掘りの金具、重厚な漆塗りが特徴です。その独特な金具と漆使いは年月が経つにつれて深い輝きを見せます。
沿革・歴史
18世紀後半、当時の岩谷堂城主の岩城村主が、木工品制作を奨励したのが始まりと伝えられます。 戦後の生活様式の変化や安価な大量生産品の流通に押され、生産量は平成9年をピークに低迷を続けていますが、近年では、ふだん使いに取り入れやすい箪笥製作の技術を生かした小物も製作しており、その受注量は徐々に伸びています。
浄法寺塗
漆のしっとりとした、あたたかみのある質感や深みのある艶を最大限に引き出すため、無地の朱・黒・溜による光沢をおさえた仕上げとなっています。シンプルで使いやすいデザインは、ふだん使いの器にぴったりです。
沿革・歴史
開山約1200年の歴史を持つ二戸市浄法寺町天台寺で、僧侶が寺の什器を作ったのが始まりとされます。江戸時代には、藩内は元より他藩へも盛んに移出する程重要な産物になりました。その後衰退しましたが、近年再び脚光を浴び人気を集めています。また、二戸市浄法寺町は国内随 一 の生漆の生産地でもあり、国産漆の約7割を生産しています。漆掻き技術の伝承も重要な課題です。
秀衡塗
栃、欅などから形づくられ漆の衣で仕立て上げられる秀衡塗。独特の雲形と金箔が織りなす煌びやかな表情は、古来より受け継がれてきた伝承の技の賜です。木地を生漆で固め、下塗・中塗・上塗ののち、雲形の文様を描き金箔をのせ、上絵をつけて仕上げます。
沿革・歴史
秀衡塗は平泉に栄華を極め、世界遺産・中尊寺金色堂をはじめとする仏教美術を築いた奥州藤原氏が起源です。藤原氏滅亡後、江戸時代後期からは平泉隣の衣川で産地が形成され昭和に至ったとされます。近年では、ふだん使いに取り入れやすいシンプルな塗のものや、金箔と漆絵の技術を生かしつつ、かわいらしくアレンジした小物なども製作されています。