伝統的工芸品とは、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づく
経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいい、
石川県では10の伝統的工芸品が指定されています。
また、石川県には、6つの県指定工芸品や20の稀少工芸品があります。
加賀友禅の特徴は、「加賀五彩」といわれる臙脂、藍、黄土、草、古代紫などの色を基調にして描かれる花や植物、風景など自然をモチーフにした写実的なデザインにあり、武家風の落ち着いた気品があるといわれています。
九谷焼の特徴は、さまざまな色絵装飾(上絵付)にあります。素朴で豪快な「古九谷風」、全面に赤塗りで人物などを描く「木米風」、花鳥山水等を描いた彩色金襴手で有名な「庄三風」などがあります。
山中漆器の特徴は、轆轤を使った挽物技術にあります。木地職人が考案した「加飾挽き」や「薄挽き」技術は山中漆器の大きな特徴です。また、江戸時代に導入された塗りや蒔絵の技法による茶道具、特に棗が有名です。近年では、木地に合成塗料を塗ったものや、樹脂や異素材(ガラスやステンレスなど)に漆を塗ったものも製造しており、伝統漆器も新たなデザインを採用するなど様々な取り組みを行っています。
輪島塗の特徴は、輪島特産の「地の粉( 珪藻土の一種)」を漆に混ぜて繰り返し塗る本堅地技法や、木地のいたみやすい上縁に生漆を塗る「地縁引き」などの丁寧な手作業から生まれる堅牢さにあります。使い込むごとに美しさを増す輪島塗は、用と美を兼ね備えた漆器です。
金沢仏壇の特徴は、耐久性を重視した木地、木肌を生かした彫刻、そして堅地下地に漆塗りを施すところにあります。もう一つの特徴は上品な蒔絵の美しさです。蒔絵に施された象牙や青貝の象嵌、手打彫りの金具、欄間は木地彫りで表現し、金箔を多用した加飾から「蒔絵仏壇」ともいわれています。
金沢箔の特徴は、金の輝きを失わせることなく1万分の1ミリ程度の厚さ、10円硬貨大のものを畳1枚の広さにまで均一に広げる職人の技術にあります。さらに気候風土や水質が製箔に適していたことで、金沢は金箔の国内生産の99%以上を占めるといわれています。
七尾仏壇の特徴は、堅牢な作りにあります。主に能登の農家向けに 受注生産されてきたので、扉は何層式にも折られる大型のものが作られ、運搬に便利な解体できる「枘組み」という技法も開発されました。
金沢漆器は量産よりもむしろ一品物の美術工芸品といった趣が強く、調度品や茶道具が主に作られています。堅牢な塗りと高蒔絵、研出蒔え絵などの高度で繊細な加飾の「加賀蒔絵」として知られています。
牛首紬の特徴は、独自の糸づくりにより柔らかい着心地でありながら、釘に引っ掛けても反対に釘が抜けてしまう「釘抜き紬」といわれるほどの丈夫さを合わせ持つことにあります。2匹の蚕が入っている「玉繭」から直接糸を引き出して製糸しているため、絹糸は太くて節があり、絹と真綿の両方の美しさをもっています。
加賀繡は、多彩な色合いの絹糸や金糸・銀糸を用い、絹の生地に一針一針、刺し込み制作しています。絹糸を縒り合わせることや、立体感をもたせる肉入れ、色のグラデーションをみせるぼかしなどの刺繡の技法によって、絹の艶やかで美しい表情をみせます。
金沢市の二俣では、加賀藩に献上する加賀奉書など高級な公用紙が漉かれていました。また、川北町では加賀雁皮紙、輪島市では仁行和紙と称される和紙が漉かれてきました。和紙は耐久性や強靭さに加え優雅さを併せ持つことから、近年は従来の紙製品に加え、間仕切りや壁紙、照明などにも用途が広がっています。
美川仏壇の特徴は、下地漆とニカワを混ぜ合わせたものを型に押し当て立体的な文様を施す「堆黒」の技術にあります。青森ヒバやイチョウを適所に使った丈夫な木地に錆地による堅牢な下地付けを行い、漆塗り・蒔絵・研出・螺鈿な どが施されています。
金沢の桐工芸の特徴は、桐の軽さや、表面を焼くことで浮かび上がる木目の美しさ、手触りの温かさ、華やかな錆上蒔絵にあります。火鉢をはじめ、トレーやコースター、お盆のような食器から、壁掛けや屏風のような飾りなど、伝統は大切にしつつも、現代の生活に気軽に取り入れてもらえるような商品を生産しています。
軽くて通気性も良く丈夫な檜細工は、山仕事や農作業用の笠として発展しました。現在は檜笠のほか網代天井、各種かご、花器なども作られており、素朴な民芸品として親しまれています。
中世、能登半島の先端「珠洲」の地に栄え、14世紀には流通が日本列島の四分の一に広がるほど隆盛を極めた須恵器の系統を継ぐ古陶・珠洲焼は、戦国時代に忽然と姿を消しました。その理由は今もはっきりとは分からず「幻の古陶」と呼ばれてきましたが、約500年の時を経て発祥の地によみがえりました。現代の珠洲焼は、かつての製法を受け継ぎ、強還元炎による黒灰色の焼き締めを基本としながら、薪窯・灯油窯・ガス窯それぞれの特色を生かして、伝統の上に現代の技を加え多様な作品が作られています。
加賀毛針は、原材料に野鳥の羽毛を使い、その接合部分に漆や金箔を施すなど、美しさと気品にあふれています。また、高度な技術により丈夫で機能性にも優れ、大切に使えば1つの毛針で1 0 0 尾以上の鮎があがるといわれています。
大樋焼は、茶道と深く関わりながら発展してきた焼物で、現在では茶盌、水指、花入のほか日常使いの作品なども作られています。土作りから本焼きまで一貫して手作業で行われ、特徴である飴色の釉薬には雪国にふさわしい素朴で暖かい味があります。
加賀竿は、全天候に対して耐久性があり、かつ扱いやすくするため、竹を高熱加工して強靱さをもたせ、さらに漆塗で補強と装飾性を加えています。長期使用にも耐えられる堅牢さを持った実用的な美術工芸品ともいえる竿です。
前田家藩主・利家の金沢城への入城祝いの獅子舞から発展した加賀獅子頭は、八方睨みの眼光も鋭く、大型で漆や金箔など豪華な装飾が特徴で、原木には白山麓などの桐が使われています。現在でも、各町の守護として各町内に1基、それぞれに名工の手による作品が所蔵されています。
象嵌とは、金属の地金表面に象嵌する紋様部分を鏨で掘り下げ、色彩の異なる金・銀・銅、又はこれらの割合の異なる合金で紋金を作り、嵌め込んでいくものです。加賀象嵌の特徴は、嵌め込んだ紋金が抜け落ちないようにアリ立て(表面より奥が広がった台形型にすること)を行い、鏨で打ちならし固定します。また、掘り下げる深さや紋金を嵌める順番を変えることで、重なっている様に象嵌することができます。
加賀提灯は、竹ヒゴを1本1本切断して骨にすることで、長い竹を螺旋状に巻いたものとは異なり、伸びが多く、1本が切れても全部がはずれることがない丈夫なものになりました。現在では祭礼用や装飾用として製作されています。
水引は、元来贈り物の飾りとして主に祝事に用いられました。紙の発達と同時に金を使った美しい水引ができたものと伝えられます。従来からの婚礼装飾などに加え、近年では人形も作られています。
金沢表具は、京表具の流れをくみ、百万石文化を反映してどっしりとした渋い仕上がりが多く、寸法は金沢の町家に合わせ、京寸法より短めです。現在は金沢市を中心に古い掛け軸などの文化財の修復にも携わるなど、高度な技術を誇っています。
金沢和傘は、傘の中心部に和紙を4重に張るとともに周辺部に糸を5重・6重に張り、破損しやすい部分を補強するなど、丈夫なことが特徴です。戦後、丈夫で安価な洋傘に押されて需要は減りましたが、丈夫な金沢和傘は今も根強い人気があります。
城下町金沢の郷土玩具としては、獅子舞や加賀鳶の姿の「加賀人形」、「加賀八幡起上り」、「米喰いねずみ」、「もちつき兎」などがあります。もともと子どもたちの玩具ですが、縁起をかついだり、誕生祝いや病気見舞いにも使われているものもあります。
江戸時代には武家の女性の教養の一つとして数えられていた琴は、明治以降も女性のたしなみとして城下町金沢の生活に根づいていました。金沢の琴の特徴は、蒔絵や螺鈿をふんだんに使った雅なものが多く、楽器の域を超えて芸術品や装飾品といった趣があります。
三弦は、通称「三味線」と呼ばれ、邦楽や民謡、長唄には欠かせない民族楽器として、芸能遊芸の非常に盛んな金沢に現代まで受け継がれています。
石川の太鼓製造技術は400年の伝統があり、深みのある音響にすぐれていることで全国に知られています。原木のケヤキなどの乾燥から始める一貫生産によって作られており、特に皮は江戸時代から伝わる技法と霊峰白山を源とする手取川の清流によって鍛えられ、すぐれた耐久性と遠鳴りのする独特の音色が生み出されます。
竹細工は茶道や華道の隆盛と共に発展してきました。以来、生活用品も多く作られてきましたが、工業製品の台頭でそれらは減少し、現在では、緻密で繊細な模様を表現した網代編みや高度な編み方で茶道具や花器などが作られています。
茶の湯釜は模様を付けた外型と中型の間に高温で溶かした鉄を流し込んで成型し、漆などで色を付け仕上げます。その形は時代と共に変化し、また種類も増えてきました。茶道の盛んな金沢で脈々と受け継がれてきた工芸品です。
旧鶴来町(白山市)はその名にもあらわれているように、刃物鍛冶が盛んな土地柄で、農耕用から山林用、家庭用まで、生活の中に息づく打刃物を作り続けてきました。現在も注文に応じて、非常に珍しくなった「野鍛冶」により、鍬、鎌、鉈、鋸などを作っています。
友禅や小紋の柄や紋様を染めるための型紙彫刻です。薄い楮和紙を縦横に柿渋で張り合わせた紙を切り抜いて型紙をつくりますが、その技法は半円形の小錐を使う錐堀や、正方形や星形などの文様に合わせた道具を使う道具彫りなどがあり、精緻な文様を彫り上げています。
材料は、錫と銅の合金である砂張と呼ばれる合金が使われています。鋳型に流し込んで形成し、表面をまんべんなくたたいて金属を締めた後、焼き入れ、色付けを経て完成した銅鑼は、深い余韻を残した柔らかな音色で茶事席を静めてくれます。
和ろうそくを作るには最初にろうそくの芯を作ります。芯は、和紙を円筒状にした上から灯芯草という植物を乾燥させたものを巻きつけて作ります。このつくり方によって、下部から酸素が空洞状の芯を通り供給され、灯芯は溶けたロウをより多く吸い上げるため、燃焼力が増し大きく力強い炎が生まれるのです。次は和ろうそくのかたちにする作業で、木製や金属製の型を使い、その中へ溶かしたロウを流し込み、固まったら型から抜き出し、小刀を使って形を整えたら完成です。
能登上布の歴史は古く、およそ二千年前、第十代崇神天皇の皇女が現在の中能登地区に滞在した折、地元の民に機織りを教えたことが起源といわれます。「蝉の羽のような」と形容される、軽さ、透け感、ハリ感が能登上布の特徴です。また、櫛押し捺染・ロール捺染などの独特な絣染め技法や多くの製造工程により造りだされた精緻な絣模様は、古くから盛夏の手織物として着物愛好家の方々から絶賛を得ています。
割り物と呼ばれる打ち上げ花火は、星・割薬・玉皮・導火線の4つの部分から構成されています。この中で「星」と呼ばれる火薬の塊が、光や音となって空中を飛ぶ、花火の命にあたる部分です。1つの花火には、この星が百個から数百個組み込まれています。